一体どういう風の吹き回しだ。女を自分のベッドでひとりで寝せて、自分はソファーで寝るなんて。それにしてもこのソファー、こんなに寝心地が悪かったか?
メローネはらしくない自分の態度に驚いていた。まるで煌びやかで豪華絢爛な装飾を纏った、芸術的とも言えてしまうような特大ケーキを前に、食べるのが勿体ないとたじろいでいるようだと自分を比喩して笑った。そう。・という女性は、メローネにとってあまりにも純粋過ぎた。汚れきった自分が手を付けるにはあまりにもできすぎた“ガールフレンド”だ。そんな彼女に嫌われたくなくて少しでも紳士らしくしようと、彼は今晩、彼女を敢えて遠ざけた。こんな我慢や猫かぶりがいつまで持つかは彼自身全く分からなかったが、可能な限り我慢しようと彼は心に決めた。
肘掛けにクッションを凭れかけた所に頭を預け、眠気が襲い来るまでと目を閉じてメローネが思い浮かべたのは、昼間のとのセックスだ。
普段捕らえた女を犯しても、彼が満たされた気分になることはなかった。恐怖心と嫌悪感に溢れた目で睨みつけられ、やめろ触るなと暴れる女。それに腹を立て、やかましいからと脱がせたショーツを口に押し込んで、拘束したまま膣にペニスを突っ込んだ。そうして果てても満足するのは体だけだった。
女性とはそんな性交渉しかしてこなかったメローネにとって、捕らえたが見せた反応は異例尽くしだった。メローネが“犯している”という感覚でいた時から彼女は酷く大人しかった。汚らわしいとか、彼を否定するような言葉を少しも吐きはしなかったし、少しは拘束から逃れようと抵抗していたようだがそれも最初の内だけだった。怖がっていた時もあったが、その恐怖心も時間の経過とともに薄れていった。目と目が合った時、彼女は恍惚とした表情をも見せ始めた。そしてメローネはの拘束を解き、一か八かの賭けに出たのだ。
最早完全に無抵抗となったが自分を受け入れるか、受け入れないか……。もし、拒否されていたら?もし、足早にベッドから立ち去っていたら?自分は初めて彼女を目にした時から彼女に惹かれていたのだ。きっと今度こそ、手ひどく彼女を抱いただろう。だが、不思議とそうなる予感は無かった。どことなく生きることを諦めているような雰囲気を醸し出す彼女が、死ぬ間際に物は試しとされるがままでいようとするような……そんな諦めを、メローネは彼女に感じ取っていた。もしかしたら、この女性なら自分を受け入れてくれるかもしれない。愛に飢えた彼は、そんな淡い期待を抱いていたのだ。
結果、はメローネを受け入れた。上手くいった。自分の過去も、彼女の過去もほとんど明かさないままに、今や晴れて恋人同士だ。こんなバカな話があるだろうか。オンナを捕らえてレイプしては殺しの道具にするような暗殺者に恋するなんて。しかも拘束は解いて自由にしてやるって言っているのに、あえて自分からこの家に留まるなんてあり得ない話だ。だが、これは夢じゃない。現実だ。
今の自分はこれまでに無い程酷く幸福だ。そしてあのセックスは、最高に気持ちが良かった。満足したのは体だけではない。心の底から彼女を愛しいと思えた。その愛を受け入れてもらえることが、これほどまでに満たされることだなんて知らなかった。――メローネは確かに心から満たされていた。
ああ、ダメだ。さっき決心したばかりなのに、もうそれが揺らぎそうだ。彼女が求めてくるまで、彼女を抱かないって……そんなこと、オレにできるのか?何も知らない彼女を、自分一色に染め上げたい。頭のてっぺんから足のつま先まで、どっぷりと愛欲に浸らせて、自分を求めさせたい。もうオレ無しじゃあ生きていけないって言うくらいに。そしてオレも、彼女に愛されて、もっともっと……最高に満たされたい。
メローネは充血し始めたペニスに手を伸ばした。スウェットパンツの上からそれを撫でつけて、太く、大きく成長させていく。その間、彼はまた過去を思い返していた。
歯を立てたら殺す。これまでは、そう脅して女に奉仕をさせていた。上手い女は上手かった。上手くやれば解放してもらえると勘違いして、とんでもないテクニックを駆使してくる女すらいた。きっとあの女は、チェリーの軸を口の中で舌を使って結ぶなんて芸当もお手の物だったのだろう。メローネはそんな女に当たるのを面白がっていた節もあった。だが彼は、愛故の奉仕を受けたことは一度も無い。それはきっと、最高に気持ちがいいんだろう。例え経験が無くとも、優しく愛撫されて、ぺろぺろと可愛らしく舐める姿を見下ろしているだけでイってしまうんじゃないか。むしろ、ペニスなんてまじまじと見たことすらないような女性に、一から手ほどきをして教え込むのも楽しいかもしれない。そんな願望が湧きおこる。
にフェラチオしてもらえたら……どんなに気持ちいいかな……。
そう考えただけで、彼の中心ははち切れんばかりに膨れ上がった。
……こんなんじゃあ眠れそうにない。
メローネはソファーから身を起こして立ちあがり、おもむろにバスルームへと向かった。服を脱ぎ、空のバスタブに身を預けると、股間に手を持って行き、自慰を始める。自分の手で自分を慰めるのはいつぶりだろうか、と遠い昔のことを思い浮かべる。捕らえた女とのセックスはほとんど自慰と変わらない一方的なものだったが、自分の手でするよりは幾分マシだった。
だが、今日の自慰はそれより更にマシだと思えた。単調に手を上下に動かすだけだったが、不思議と、のあの艶めいた姿を想像するだけで興奮できた。そしてまだ見ぬ光景を思い浮かべる。彼女の舌がゆっくりとペニスを這う。そして小さく開かれた口に彼自身を押し込んで、先端からゆっくりと咥え込ませていく。苦しそうに眉を顰め、涙目で彼を見上げる。
そんな目で見られたら、キミをもっと……いじめたくなってしまう……!
妄想の中の彼女の頭を手で固定して一度喉の奥を先端で突いてやると、目を大きく見開いて咳込んで。もう一度、と窘めれば、彼女はまた従順に口を開くのだ。
……。フェラだけじゃなくて、やっぱり君とセックスがしたい……。もっと君の……奥の奥まで愛したい……。
ひとりで達するのはそれほど容易なことでは無い。気分は悪くなかったが、恋しい人を思い浮かべて、フェラチオをさせる妄想なんかして……自分を慰めるなんて空しいことは、さっさと終わらせたかった。これは彼女への欲望を抑えるためにする作業だ。早く、早く達してしまえ。メローネはそう思いながら、時に息を止めて全神経を手元に集中させた。
「っあ、……い、イくっ……!」
射出された精液がバスタブの底に落ちる。それはそのままにして、メローネは息を荒げて天井を仰ぎ見た。呼吸が落ち着いてくると、メローネはふと思った。
……やっぱり無理だ。
を2階に追い立ててソファーで寝ようと試みるまで固く心に決めていたはずのことは守れないと、この時既にメローネは確信していた。彼女が自分とセックスしたいと思うのを待つのでなく、彼女が自分とセックスしたいと言うように、そんなそぶりを見せるように彼女を誘導しよう。きっと今の自分にはそれができる。
だが、今夜はもう彼女は寝ているだろうから、我慢だ。
メローネはバスタブから立ち上がり、シャワーで下半身とバスタブの底を軽く流すと、タオルで水滴を拭って寝間着を再度身に纏う。幸い、一度の射精で落ち着きを取り戻せた彼はソファーに戻り、身を横たえるとブランケットを纏って眠りについた。
04: And we'll Love
買い物を済ませたふたりは16時ごろに家へと戻りついた。買った物は買ったままの状態でリビングのローテーブル付近に据え置いて、はすぐに夕食の支度を始めた。
夕食を終えると食器洗いは自分に任せろとメローネが申し出て、はキッチンから追い出される。所在なさげにリビングのソファーに腰掛けた彼女は、壁際に小さな本棚を見つけた。本は隙間なく立てられている。その中でひと際目を引く背表紙を見て、はそれを手に取った。カーマスートラと銘打ってある。大した挿絵もないその本をパラパラとめくり、たまたま目に留めた章を、何の気なしには読み始めた。メローネはキッチンカウンター越しにが何か本を読んでいると知ってはいたものの、その本が何かまでは分かっていなかった。洗い物を済ませたメローネが彼女の元に近寄ると、手元の本の題名を見て驚愕する。
「ねえ、メローネ。この本に……大事なのはお互いが満足することだって書いてあるんだけれど……」
カーマスートラ。インド発の性の指南書だ。恐らく、深い赤色の背景に金の唐草模様を纏った綺麗な背表紙に惹かれたのだろう。イタリア語に訳されたそれをは読んで、あろうことか「カーマ(愛)」に関する章を読んでいる。が言ったのは、性交の際の体位について事細かに言葉で書かれた章が始まる一歩手前の話だ。もちろん、彼はそれをに読ませるつもりがあってこれ見よがしに本棚に置いていた訳では無い。メローネは困惑した。これからどうやって自然な流れで彼女を誘おうかと考えていた矢先、本人がそれらしい話を振ってきたのだ。天然なのか、ただ単純に疑問に思ったからなのか、それとも彼女がメローネを求めているのか・・・それとも自分が何を読んでいるのかすらよくわかっていないのか。メローネはの真意を掴めず焦燥感に駆られる。ひとまずああ、と短く応答し、彼女の次の言葉を待った。
「あなたは、私が何をしたら満足できる?昨日のは……私ばっかり、その……良かったんじゃないかって思ったから……」
は頬を赤くして、彼女を見下ろし立ち尽くすメローネを見上げながらそう言った。自分が何を読んでいるのか、はきちんと理解していた。そして彼女はメローネを満足させてやりたいと思っている。メローネはそれを察し、たまらず彼女の隣に身を寄せた。
「オレは……昨日キミと繋がれたことで十分満たされた。……はずだった。だけど、キミと離れてこのソファーでひとり寝ようとしている間に、もっと君と愛し合いたいって……感情に歯止めが利かなくなったんだ」
メローネはの右手を取り、彼女にキスをする寸前まで唇を近づけ、の瞳を見つめた。
「……キミがオレを満足させたいって言うなら、ひとつだけ、頼みを聞いてくれないか」
「ええ。……私は何をすればいい?」
「キミの口で、オレのを咥えて……くれないか」
「!?あ、あの……友達から、聞いたことはあるの……その。フェラチオって言うのよね……。でも、やり方なんて私良く知らないし、当然やったこともないから……だから、あなたを満足させてあげられるかどうか……」
「無理にとは言わないよ。やり方はオレが教える」
そう言いながら、メローネはの手を股間へと誘導する。は顔を真っ赤にしてメローネを見つめていた。メローネもを見つめ返し、とても自然とは言えない流れに内心で苦笑する。だが、持ち掛けたのはの方だ。彼女が自分を満足させたいと言うから、どうすればいいか提案したまでだ。無理にとは言わないと言いながら半ば強制的にそれをさせようとしている自分の行為に矛盾を感じつつも、彼はそれを止めようとはしなかった。の胸は焦りによって早鐘を打ちはじめた。熱く盛り上がったモノに手が触れた瞬間、彼女は下唇を噛んで目を瞑る。触れたところでメローネの手から解放されたが、彼女は自分の手を引っ込めようとはしなかった。
「……撫でればいい?」
「最初はキミが思うように触ってくれればいい」
はソファーに身を預けるメローネの正面に移動して床に膝をついた。膨らんだ部分を指先でそろそろと撫ぜたり、軽く力を込めてふにふにと遊んだりする。刺激を強めようと、手のひらをそれに沿わせて何度かゆっくりと上下させた後、メローネの顔を確認する。メローネはひどく興奮した様子でその様子を上から眺めていた。は途端に恥ずかしくなって手を引っ込めてしまう。
「止めちゃうのか?」
「やっぱり……教えてくれた方が……」
「そうか……じゃあ、オレが言う通りにして」
メローネは身に着けていたパンツのジッパーを下ろし、腰を浮かせてそれを脱ぎ去った。
「下着の上からでいい、キス、して欲しいんだ。先端から根元まで……まんべんなく」
は言われるがまま、メローネの男根にキスを落とした。床に両手を突いて少し前かがみになり、下着の所為で彼の体に押さえつけられているそれの先端と思しき場所に鼻先を近づける。一日中動き回って汗をかいていただろうに、少しだけ蒸れたような臭いがするだけで、特段口を近づけるのが躊躇われるようなことは無かった。は唇を尖らせ、リップ音を鳴らしてキスを落としていく。
「先端にキスをし終えたら、片手でそこに触れて欲しい。先端を弄りながら、根元までゆっくりキスしていってくれ」
はキスを続けながらメローネの下腹部に手を寄せて、先端を探りあてる。そこを親指、人差し指、そして中指の先でそろそろと刺激した。メローネが初めて吐息を漏らす。が根元までキスをし終えると、メローネは下着を剥ぐように言った。が両手で下着を引き剥がすと、完全に勃ち上がったペニスが現れて、は再度ごくりと唾を呑み込み、それをまじまじと観察した。
「舌を出して、先端の……ツルツルしてるところを舐めて」
自然と両手で支えるように男根に触れたは、言われた通りにしながら上目遣いでメローネの顔色を伺う。の視線に気づいたメローネは、悩まし気なその表情を見て興奮した。の頭に手を添えて、たまに撫でてやる。は褒められているような気がして嬉しくなって、もっと気持ちよくなって欲しいと一心不乱に口淫を続けた。先端を咥え、舌をペニスに沿わせて上下に動かすように指示されると、は従順に頭部を動かした。
「ああ、。いい……っ、すごく、上手だっ……ん、……はぁっ、熱い舌が……オレのに絡まって……あっ、ディ・モールト、気持ちがイイっ」
メローネのよがり声を聞いて、は自身の中心が熱く疼くのを感じた。昨晩、彼を思って自分の体に触れていた時と同じ反応だ。また彼に優しく愛撫してもらえると期待している。それが顔に出ていたのだろう。物欲しそうに自分を見上げる彼女の艶っぽい顔を見て、メローネはたまらずの頬に手を沿わせた。
「。こっちに来て……オレの膝の上に乗るんだ」
「えっ……もう、いいの?」
「また今度してくれたらいい。……今はキミとキスがしたい」
腕を掴んで引き寄せられ、反り立ったメローネのペニスが彼女の股座に当たる位置に腰を据えたはぞくりと身体を震わせた。ひどく熱い塊が、脈打っているのも感じ取れてしまうほどに彼女の恥部を圧迫した。そんな彼の昂ぶりに戸惑いつつ、目前に迫るメローネの瞳を見つめ、迫ってきた唇から覗く長い舌を口内に受け入れる。メローネは幾度となく角度を変え、荒々しくの口内を掻き乱した。興奮したふたりの吐息が荒々しく鼻から抜けはじめると、余裕なさげにメローネがへ問いかける。その間、彼の手はが身に纏っていたワンピースを下からたくし上げると、ブラジャーのホックを外そうと背後に手を回した。
「……。オレのをしゃぶって、興奮してたんだろう?早くこれを入れて欲しいって……昨日知ったばかりだってのに……きっと君の中はもうぐちょぐちょだ」
昨日は控えていたの羞恥心を煽る声掛けを、メローネは抑えられない。恥ずかしがってが顔を逸らしたり、泣きそうな顔を見せるんじゃないかと期待してのことだ。彼の期待通り、は紅潮させていた顔の赤みを更に強め、困ったように眉を下げて見せた。何か言い返そうとしたものの、胸の膨らみを空気にさらされたことに意識を持っていかれてしまったようだ。メローネが両手の親指で両の胸の突端を刺激してやると、はくぐもった嬌声を喉から響かせた。
「なあ。自分でショーツを脱いで……オレに跨ってくれないか」
は恥ずかしそうに尻ごみをしたが、かろうじてまだワンピースは剥ぎ取られていない。まだ肩ひもを通したままで宙ぶらりんになっているブラジャーが気持ち悪かったが、腕を袖から抜き去れば、たちまちメローネにすべて剥ぎ取られてしまうだろう。そうならない内にと、はメローネに跨ったまま器用にショーツを脱いだ。今度は直に、ふたりの恥部が触れ合った。
「ああ、やっぱり。濡れてるのがよくわかる。やらしいな……。ああっ、早く……はやくキミのナカに入りたい」
耳元で囁かれ、はたまらず身を固くしてメローネにしがみつく。それと同時に恥部がこすれ、拍子でクリトリスを刺激してしまい、は再び小さく嬌声を漏らした。
「でも、まだダメだ。、自分で動けるかい?さっきみたいにさ、入れちゃあダメだ。ぐちゅぐちゅって……音が聞こえてくるくらい、キミの濡れたそこで……オレのを擦ってくれ」
「いやっ……そんなの、恥ずかしくて、できない……」
「ああ、。嫌だって言われたら、もっと可愛いキミのこといじめたくなるんだ……。あんまりオレを挑発しないでくれ……」
メローネは舌での鎖骨から耳の裏側までをゆっくりと舐め上げた後、首に啄むようなキスをしていく。両手はスカートから覗く太腿をさすり、彼女が動くのを急かすように淡い快感を蓄積させていった。はたまらず小刻みに腰を動かし始める。メローネは昨日まで何も知らなかった彼女が、言われるがままに快楽を追い求める姿を恍惚とした表情で眺めていた。くちゅくちゅと淫猥な水音が、静かなリビングで反響する。は口元に軽く握った拳を当て、メローネから恥ずかしそうに視線を逸らす。彼の肩に乗せられたもう片方の手は、彼女の良い所に当たる度にきゅっと握りしめられた。
「んっ……メローネ、もう、許して……恥ずかしいのっ……」
「気持ち良くないのか?……オレは、気持ちいいよ。音もちゃんと聞いて……オレのせいじゃあない、キミが濡らしてるから響いてる音だっ」
メローネはの首筋に手のひらを当て、ソファーの座面に彼女の背を押し付けた。次いでワンピースのスカート部分を腹まで捲り上げ、恥部を空気にさらしてやる。ぬるぬると、棒状の熱い塊がの割れ目を上下する。唇を貪られ、耳介に舌を這わされ、手や口で可能な限り与え尽くされる快楽に溺れ行くの嬌声は次第に大きく、絶え間なく発されるようになっていた。それが更にメローネを興奮させて、彼の腰の動きも次第に早くなっていく。メローネの先端が穴に引っかかる度にのクリトリスを刺激して、彼女から悲鳴にも似た喘ぎ声を引き出した。
「なあ。……もう、欲しいんじゃないか?入れて欲しい、だろ……?」
そう言った彼が、これ以上我慢できそうになかった。早く彼女の中に自身の肉棒を埋めて、彼女の中に欲を吐き出してしまいたい。
「うん……メローネ。来てっ……んあっ」
彼女が答えきるや否や、メローネは男根を彼女の中に突き入れた。余裕の無い今の彼は、昨日程ゆっくりと事を進める気でいられなかった。そして感極まった彼は昨晩のことを打ち明け始める。
「さっき……感情に歯止めが利かなくなったって、言ったろう?っ、その後、オレが何をしてたと思う……?。キミに嫌われたくなくてっ……キミが今度オレに抱かれたいって素振りを見せるまで、我慢するつもりでいたんだ……。だからバスルームでオナニーしてた。。キミのことを考えて、オレはキミが2階に行った後、オナニーしてたんだ。キミのこと、めちゃくちゃになるまで愛したくなって……。それで今日、キミをどうやってベッドに誘おうかって考えてた時、キミがとんでもないこと聞いてくるもんだから……抑えられなくなったんだっ」
は昨日よりも激しく、そして早く与えられる快感に息を詰まらせていた。そんな中で語られたメローネの密事に、は胸を熱くした。自分も同じだったのだ。彼に与えられた快感を追って、彼女もまた自分の体を自分で慰めていた。ふたりが互いを思い合っていたのだと分かり、はこれ以上無い程に満たされた気分になった。そして彼女もまた高揚して、昨晩墓まで持っていこうと思っていた秘密をメローネに明かしてしまう。
「メローネっ……私も、私もなのっ……恥ずかしくて、誘ったつもりは無いって言ったけれど……でも、私、本当は、あなたに抱かれたかった……!それで私も、あなたのことを思って、自分で自分の体を触ってたの……。あなたのベッドの中で、あなたのこと思いながら……。ああっ、そんな私のこと……気持ちが悪いって、幻滅する?」
「まさか、幻滅なんてするわけないじゃないか!っ……これがきっと愛なんだ。オレたちは愛し合ってるんだ」
「ええ、メローネ。きっとそう。私、あなたのこと、愛してるんだわっ」
「オレも、オレもだ……。キミのことを、愛してる……!」
ふたりはこうして互いの愛を確認しあった後、言葉少なに深い口づけを交わしながらセックスを続けた。しばらくしてが絶頂を迎え、少し遅れてメローネがの中に欲を吐き出すと、肩で息をしながらふたりは見つめ合い、そして笑い合った。
ふたりはほぼ同時に運命を感じた。
そもそも、誰かに殺されたいと彷徨っていたが、誰かを殺そうと思っていたメローネに捕らわれたことこそがすごい巡り合わせだった。そして、捕らえられたが、メローネと恋に落ちてしまったことも奇跡的なことだ。
きっと自分はメローネに会うために生まれてきたのだとは思った。メローネもまた、初めて人を愛することを教えてくれたと出会えたことを、自分の人生には起こり得ない奇跡と、そして運命だと思った。
その運命が悲惨な結末を迎えることなど知る由もないふたりは、刻限が迫りくるまで幾度となく身体を重ね、深く、深く愛し合った。