銘々のジレンマに
たったひとつの最適解を

……キス、してもいいか?」

 はギアッチョにそう問われて戸惑いを見せた。

「いいよ。……しよう」

 はやっとのことで返答した。やっとといっても、5秒と無い間黙っていただけだが、その5秒近い時間を、ギアッチョは永遠とも思えてしまいそうなほどに長く感じていた。聞かなくてもいいことを聞いたと思ったし、聞かなきゃよかったと後悔すらした。だが、許可は下りた。ギアッチョはの唇にめがけてゆっくりと自身のそれを下へとおろしていった。

 最初は軽く触れるだけだった。幾度か小鳥が餌をついばむような動きが繰り返された後、ちろ、と舌先が唇を割って入ってきた。普段の彼からは想像もつかないほどに控えめだ。は二度目にそれを自分の舌で捉え、奥へ引き込むように大きく口を開いた。やがて激しく絡み合う舌。お互いの口の周りはどちらの物かもわからなくなった唾液に濡れて、余剰分はお互いの口角から下へと流れ落ちていく。

 キスを続けながら、ギアッチョはの乳房を掴んで揺らした。優しく包み込んだそれの中央で固くなった突起。掌の真ん中あたりで感じたその存在に誘惑を受けて、彼は指先を伸ばして軽く摘まみ上げた。塞いだ口の奥から小さな喘ぎ声が聞こえ、上がってきた空気が鼻から抜けていく。指の腹で転がして、押し込んで、そろそろと周りをなぞって焦らし、再び摘み上げる。

 深く激しい口づけに眉根を寄せて息継ぎついでに唇を離したは、ギアッチョの目を見つめた。

「舐めてくれない……?手でいじられるのも好きだけど……舐められると、たまらなく気持ちいいの」

 せがむような艶やかな声。の新たな一面にギアッチョはぞくりとした。見てみたくてたまらなくて独りの夜に想像までしていた光景が、今目の前にある。彼は昂る己を放置して、彼女に言われるがまま乳房の中腹から乳首に向って舌を這わせた。

 多分気のせいだが、甘く感じた。口の中で主張してきて、舌に触れるその蕾。優しく撫でてたまに軽く歯で噛んで、しゃぶりついて吸い上げる。繰り返すと、は声を上げて喘いだ。

「いい、気持ち……。こっちも……お願い、ギアッチョ」

 乳房を揉みしだいていた方の手にがそっと触れた。ギアッチョは舐っていた方の乳首から口を離し、反対側の乳首へと顔を移す。最早ギアッチョはの言いなりだった。

 普段誰かに何かやれと言われたら、――リーダーであるリゾットの言うことでなければ――最低でも二言三言は文句を言って、言われた通りにやるかどうかは彼の気分次第。だが、今に限ってはそんな意固地な彼は鳴りを潜めていた。が求めるものを全て与えたい。のことを好きだと思う純粋な気持ちと、好きな女に自分を受け入れてもらえるという喜びが今の彼を支配していた。

 下の方での腰がもどかしそうに動くのを感じると、ギアッチョは乳房にあてがっていた手を下へやった。溢れた愛液を吸い取る布も何もないそこは、彼の手を容易に奥へ奥へと誘っていく。

「濡れてる。乳首いじられんのが好きなんだな」
「ん……好き。っ、あ、そこ……一緒にされると……ああっ!」

 顔を真っ赤にしてが悶える姿。これをどれだけ見たいと思っていたことか。改めて自分の情けなさを思い知るギアッチョだったが、だがその情けない自分も今日までだ。これからは、のこの姿がただの妄想ではなく過去の記憶となる。

 手の動きを速くする。たまにクリトリスに触れてやるとは悲鳴を上げる。そしてまた指を奥へ突き入れて、奥へ手前へと動かした。

「あ、ああ、ダメ……ギアッ、チョ……あっ、あああっ!!」

 はギアッチョの手指を不規則に締め付けながら仰け反った。鷲掴みにしていたシーツを手放して、荒げた呼吸を整えたを見下ろすギアッチョ。我慢の限界を迎えそうな、余裕を無くした表情だった。

「っ……ん、……ギアッチョ。すごく……大きくなってるみたい」

 はベッドのマットレスに乗せていた足を折り曲げて膝を持ち上げ、四つん這いになって彼女に跨っていたギアッチョの股間を脛で撫でつけた。彼はピクリと体を揺らして目を剥いた。首をかしげて挑発的な視線を向けてくるに釘付けになる。

「舐めてあげる」
「っ、お、おい……っ」

 良いも悪いも聞かない内に、は上体を起こしてギアッチョを押し倒した。パンツのボタンを外してジッパーを下ろし、下着の布地を押し上げていたそれを取り出すとすぐにしゃぶりついた。少しも手間取ることが無かったので、ギアッチョが制止する隙も無かった。彼ははち切れんばかりに膨らんだペニスを何の躊躇も見せずに口に含んだの頭に手を乗せたが、やめろと押し返すことは無かった。

 ねっとりと絡みつく舌の温かさと、いい所を分かりつくしたようなその動き。口の端から唾液を垂らして淫らに雄を貪るの、熱に浮かされたような眼差し。くちゅくちゅと静かな室内に響く淫猥な音。そのどれもが彼を最高に昂らせた。既に限界まで膨れ上がっていたペニスに、次々と血液が送り込まれていく。頭がぼうっとする。頭からもきっと血液が抜け出て行っている。考えることをやめた彼は、ただただ与えられる快感に身を委ねた。

「っ、ん、ううっ……おい、や、やめッ……」

 口で止めろと言っただけだ。ギアッチョはを無理やり止めるだけの力を持っている。だが、彼女の頭に乗せていた手で、彼女の頬にかかって口に入り込みそうになっている髪を耳に掛ける。もっと見たい。この光景を、もっとじっくりと見ていたい。

 だが、それを続けていると持たなそうだ。嫌だ。こんなので、いや、たったこれだけで果ててしまいたくない。の中に入りたい。彼女と、ひとつになりたい。

……もう、十分だっ……!」

 ギアッチョはの頭を手のひらで固定したまま腰を引いた。はギアッチョの目の前で股を開き、自身の中心にゆっくりと自分の指を這わせた。濡れたそこをくちゅくちゅと音を立てて撫でて、中指を突き入れて愛液を掻き出すように手を動かす。あられもない目の前の光景に、ギアッチョは喉を鳴らして生唾を飲み込んだ。

「……いいよ。来て、ギアッチョ」
「エロすぎんだろ……!」

 しばらく黙って目の前の光景を眺めていたが、やがて自制が効かなくなったギアッチョは弾かれたように再度に覆いかぶさった。そして手で支えたペニスをの中へとゆっくり押し込んでいく。

「あっ……!」
「っ、くぁッ……」

 奥へ進むにつれて締め付けが強くなっていく。ギアッチョはうめき声を上げた。やっとのことで最奥まで辿り着くと、またゆっくりと出口へ向かって引き抜いていく。

……っ、っ!」

 ギアッチョはの名を呼んだ。彼女への思いが溢れ出てきたのだ。名を呼んで、今、確かに彼女の中にいるのだと確認せずにはいられなかった。これは妄想でも夢でも無いと確証が欲しかった。

「ギアッチョ……いい、すっごく、気持ちいい……」
、オレは……オレはずっと、お前と……こうしたかったんだ」
「んっ、……それ……ほん、とう?」
「ああッ……マジ、だぜ……!」

 は息を荒げるギアッチョの頬に手を添えた。物思わし気な顔で、じっと彼の瞳を見つめる。そして呟くように言った。

「……好きよ、ギアッチョ」 
「――っ!」

 ああ、マジか。これ、やっぱり夢なんじゃねーのか。

 ギアッチョは一度果ててしまいそうになったのを必死に堪えた。もしかすると、もうこんな幸運は無いだろうと思っていたからだ。もっとゆっくり、とひとつになっていたかった。

 だが、彼女が今しがた吐いた言葉に嘘偽りが無いのであれば、また次も期待していいんだろうか。そんな思惑が脳裏を掠める。そして彼の口は彼の本心を吐き出した。

。オレも……!オレもお前のことがっ……好き、なんだ!」

 の心を必死に繋ぎとめようとするような、永遠を望むような切実な声だった。



04:報われたい思いに諦めを



 以前までは、好きでも何でも無い男と寝るのに別に抵抗は無かった。そりゃあ、ひどく不衛生な男だと病気を持っていそうで嫌だという至極生理的な嫌悪感や常識といったものは持ち合わせているし、口や股間が臭ってくるのには我慢ならないのでいくら札束を積まれようともそんな男とは寝たくない。だがありがたいことに、ターゲットになるような男は大抵金を持っているから清潔で、尚且高い香水の香りを身に纏っていた。ついでに高級車だとか高級ワインも楽しめるので一石二鳥だ。

 メローネに出会ってからはそんな価値観が一変した。体は彼だけを求めるようになった。仕事だからと仕方なく男を誑し込むのだけれど、どうにか本番に入る前に殺せないかと思考を巡らせた。そんな私的な感情で仕事をしくじる訳にはいかないのは百も承知だったけれど、それでも、この身体は彼だけの物だと勝手に断定して、無意識のうちに彼以外の男がこの身体に触れるのを避けていた。

 そして今、何とか彼の“物”にはなれた訳だが、物は物らしく物言わぬ物でいろと、メローネは口にはしないが、彼の態度はそんな思惑を如実に示していた。メローネは女が何を考えているか察知するのは得意だと言ったが、女の方だって、男が何を考えているかなんて簡単にわかるのだ。特に、別に嫌われようが何をしようが関係ないと、一片の配慮も見せない無神経な態度には敏感だ。私の心は敏感で傷つきやすいのだが、確かに関係ない。彼が何をしようと、きっと私は彼を肯定するから。

 彼の物になると心に決めた私に迷いはない。彼がやれと言ったことはやる。愛しているから。彼を愛しているから、彼が求めることを実行することこそ私の喜びだ。



 だからメローネに、ギアッチョと寝てこいと言われても、はそれを拒絶しなかった。やり方は心得ているし、そもそもメローネの言うことは命令なので例え拒否したかったとしても、それはできないのだ。



 朝方、二日酔いでグロッキーになったギアッチョが帰っていった。自室にこもっていたには会わないまま、メローネと彼女が同居しているとは露にも思わないままにアジトへと向かっていった。メローネはそんな彼を見送った後、一目散に階段へと向かった。段飛ばしで駆け上がり二階へと向かう。いいことを思い付いた、とどこかうきうきとした、軽い足取りだった。そして廊下の奥にあるの自室の前にたどりつくと扉をノックした。

 ノックの音が聞こえ、はベッドからおもむろに這い出した。重い足取りで部屋の戸口に向かい、扉を開ける。は腫れぼったい目をしばたたかせた。

。ちょっといいか?」

 そう言って返事も聞かないまま部屋に押し入って、メローネはベッドの側に置いてあったスツールに腰掛けた。

「次、オレたちに仕事が振られたら、ギアッチョとキミのふたりでやってきてくれないか」

 どうやら仕事の話らしい。心を無にして聞けそうだと、はほっとした。打ちのめされて一晩中泣いて過ごしてほとんど眠れなかったというのに、追い打ちをかけるように悪態をつかれたらひとたまりもない。

 はメローネの前を横切ってベッドに腰掛けた。何も言わずに、手混ぜを始めて視線を落として次の言葉を待った。泣き腫らした目元を見られたくないので、顔は上げなかった。

「……いいよ。何か用事でもあるの?」
「いいや。そういう訳じゃあない。大事なのは、仕事の後なんだ」
「仕事の、後?」

 仕事の話だと思っていたが、そうではないようだ。一気に雲行きが怪しくなっていく。不穏な話の流れを感じ取っては顔をしかめた。

「仕事終わりに、ギアッチョと寝てきてくれないか?」
「……え?ちょっと、待って……今、なんて」
「だから、ギアッチョとセックスしてきて欲しいって言ってるんだよ。寝るってのは添い寝って意味じゃあないぜ。それくらい言わなくたって分かるだろ?ガキじゃあないんだ」

 何故?は再びその疑問に立ち戻った。メローネは、ギアッチョが好きだと言っている女と――メローネの言うことを信じるのであればそれは私だ――同居して肉体関係を持っている。その上で、ギアッチョと寝てこいと言うのだ。理解不能だ。

「どうしてそんなことしなくちゃならないの」

 消え入るような声で、はメローネに訊ねた。メローネはとても面倒そうな顔をに向ける。命令には黙って従え、と言いたげに眉根を寄せて唇をへの字に曲げた。しばらく間を置いて、メローネは答えた。

「どうして……か。オレがキミにそうしてほしいからだよ。。別にどうということは無いだろう?好きでもない男と寝るのはキミの得意分野のはずだ。仕事でもよくやってるじゃあないか」

 メローネは何も間違ったことは言っていない。彼には、事実をそのまま伝えるということは、時として人の心を踏みにじることにもなり得るので慎むべき、という配慮が欠けているだけ。少なくともに対して、その類の配慮は無い。は胸を痛めた。メローネと同居を始めてからと言うものこうして幾度となく傷ついてきたが、一向に慣れないその息苦しさに彼女は顔をしかめた。

「それは……ギアッチョと寝るのは、仕事なの?」
「……何だよ。見返りが欲しいのか?金か?オレもそんなに金を持ってるわけじゃあ無いんだぜ」
「お金なんていらない」

 メローネは溜息を吐いた。自分に嫌われたくないからと、言いたいこともはっきりと言わず、うじうじと要領を得ない態度でいるを見ているとイライラする。そして吐き捨てるように言った。

「じゃあ、何が欲しいんだ?」
「キス、して欲しい」

 はバカげた要求をしていると分かっていた。まるで物乞いだ。だが、惨めなのは今に始まったことではない。それに自分は物乞いには違いないが、欲しいのは金じゃない。

 昨晩諦めたはずの愛を、は求めていた。この部屋にいる間は心を持った自分でいていいと決めたのだ。だって、彼がこの部屋にいるのだから。お互い個々の領域には足を踏み入れないと決めた張本人が、私の領域に“入ってきてくれた”のだから。……少しは要求したって罰は当たらないだろう。

 そう思って言ったことを、はすぐに後悔した。

「はっ……。オレが、キミに?マウス・トゥ・マウスのか?」

 メローネは呆れたと言わんばかりに首を横に振った。そして続ける。

。キスってのは、好きなヤツとするもんだ」

 瞬間、足元の床が崩れ落ちていくような感じがした。すっと顔から血の気が引いていった。は呆然と硬直したままメローネの顔を眺めた。

 セックスをする間柄だからと、必ずしもそこに愛があるとは限らないということはよく理解している。だが、仕事でなければ相手は選ぶ。選ぶという段階で、少なからずフィルターに掛けられているはずなのだ。少なからず、好きか嫌いかという判断はあって、それで選ばれた結果が自分だ。

 ――そう思い込んでいた。だが、どうやらそれは大きな間違いらしい。メローネは私のことを好きとすら思っていない。きっと、その辺に転がっている石ころと同等の存在。物、なのだ。愛着すら持てないような、何の変哲も無い、ただの物。彼は仕事に無関係な女をよく“使う”が、彼女たちと私は一緒なのだ。私はただ、チームメイトだから殺されないというだけの“物”だったのだ。

 この体も、ただ単に物として使われていただけに過ぎない。彼には私に対して、愛は言わずもがな、好きとか嫌いとかいった概念すら持ち合わせていない。

 やっと完全に理解できた。メローネにとってのがどういう物か。

「……図々しいこと言ってごめんなさい」
「いや、いいんだ。気にするな。オレの要求を呑んでくれさえすれば、何も文句は無い」

 メローネはそう言って立ちあがった。そしてベッドに腰掛けたまま、ぼうっと床の継ぎ目を眺めるの前に立った。の顎を右手人差し指の側面でそっと掬い上げ、上を向かせる。

「なあ。浮かない顔してどうしたんだよ。……目の周りも真っ赤だ。まさか、一晩中泣いてたのか?」

 は唇を噛んだ。涙は見せたくない、弱っているなんて、知られたくない。そんな虚栄心はメローネの優しい眼差しに射貫かれて簡単に崩れ去った。途端、の瞳から大粒の涙が零れはじめた。このメローネの優しい眼差しも、本心からではないと分かっている。だが縋る物が、今の彼女にはそれしか無かった。

「キミはキレイなんだ。だから笑ってる方がいい」

 メローネはの頬を両手で優しく包んだ。そして両手の親指の腹で、両目から零れ落ちてくる涙を拭った。

 ギアッチョが綺麗だと言うこの目も、艶のある美しく滑らかな手触りの髪も、触れると吸い付いてくるようなきめ細やかな肌も、しなやかに湾曲する柔らかな体も全て――自分には無い物だ。

 をキレイだという言葉に嘘は無かった。ただただ、最初は羨ましかった。ギアッチョの目を奪う、という女が。

 彼女が自分たちの前に初めて現れた時から、薄々感づいてはいたのだ。ギアッチョが彼女に見惚れていたから。自分の勘違いであってくれと願ったが、そうでは無かった。現実を突きつけられたその時、に抱く羨望はすぐに嫉妬へと様変わりした。

 底なしの嫉妬心が今、メローネを暴走させている。

 ギアッチョが好きだという女を穢したい。ギアッチョが好きだという女を支配したい。ギアッチョが好きだという女が苦しんでいる姿が見たい。

 そうしていることがギアッチョに知れれば、彼の注意が自分に向く。種類はどうあれ、果てしない激情が自分に向けられることになるはずだ。そうなれば、自分が彼の心を支配しているも同然だ。全ては自分の満たされない心を救済するため。

 運がいいことに、ギアッチョが好きだという女はメローネを好きだと言った。使える、とメローネは思った。だから彼は、手始めにを穢した後、彼女を自分の手の内に囲って支配したのだ。結果、は苦しんで涙を流している。

 嗜虐的な欲求が少しだけ満たされる。そして、これから彼女にさせようとしていることを想像すると興奮した。

 メローネは頬を覆っていた手を奥へと滑らせての側頭部を両側から圧迫するように力を入れながら、彼女の髪を根元から掴んでさらに上を向かせた。

「なあ、。口で、してくれないか……キミを見てると興奮してくる」

 むくりと膨らみ上がる欲。布地を押し上げはじめたそれに、はそっと触れた。ズボンのホックを外して、ジッパーを下ろし、薄手の下着の上から膨らみを掌で撫で付けた。まだ少しだけ柔らかさを保っていたそれを取り出すと、口の中へと押し込んだ。涙は尚もとめどなく流れ落ちていく。口の端にたどりついた涙の塩辛い味がした。

 これほどまでに傷つけられているのにどうして彼から離れられないのか、自身よく分からなかった。心の隅でふと思ったのは、物でも、使われないよりはマシだということだ。少なからず、何か目的があって、その目的を達成するために必要だからと使われているのだ。

「んっ……ああ、。気持ちいいよ。……最高だ。最高の気分だ」

 メローネはの頭部を撫でまわしながら、歓喜に打ち震えた。

 知らず知らずのうちにオレの心を踏みにじっているお前が、どれだけ傷つこうと知ったことじゃない。泣きたいなら気が済むまで泣け。胸がスッとする。お前が、苦しんで、泣いて、懇願してくると落ち着くんだ。こうやって咥えさせていると、かなりベタだが征服感も得られていい。

 オレのものを咥えた上下の口で、ギアッチョのモノも咥えてこい。そして知らしめるんだ。ギアッチョに。

 お前がオレの物だってことを。そして今度はお前が連れてこい。この家に。ギアッチョを。




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