本来ここに存在するはずの無い人物が二人。オレの女と・・・・・・・・・オレの子供、らしき赤ん坊。
「最低だねノブナガ。アンタ種まいて一人のこのここっちに戻ってきたのかい?」
「根無し草が好きなとこに種まくんじゃないわよ。アンタ女をなんだと思ってんの」
「ノブナガさん・・・サイテーです・・・」
旅団員の女性陣に散々苦言を聞かされているオレと、その中心でドヤ顔をしているオレの女、。かわいいかわいい言われてマチからパク、パクからシズク、シズクからへとたらい回しにされる我が子。名はまだ無い。何だこの状況。
「いやいやいや。お前ら人の話聞いてた?オレは止めたよ?オレはちゃんとゴム付けようって言ったよ?それなのに拒否って挿れやがったがわる」
「そんな下世話な話しないでよノブナガ」
「・・・・はい」
後編
どうしても合わせたかったんだろう。オレととの子である、この赤ん坊に。そのために遠路はるばる旅団のホームである流星街にまで赴いた。そもそも、連絡さえくれればオレがジャポンにでもどこにでも行ったのに、のやつ、知らせ一つよこさずに赤ん坊連れてのこのこホームにまでやってきやがった。
くノ一の情報探査能力がすごいのか何なのか、団員以外知り得ないホームの位置まで把握していて、オレがホームにいないのに「ノブナガに会わせろ」と言って部屋に乗り込んで来たと、フィンクスが青ざめた顔で話していた。
オレは「説教なら後でうんと聞いてやるから、ひとまずと二人っきりにさせてくれ」と言って、女性陣を部屋から追い出し、改めてと向き合った。
「・・・お前、何でこんなとこまで来やがった」
「名前・・・決めなきゃって思って・・・」
「何で赤ん坊つれてこんなとこまで来やがったって聞いてんだ!!危ねぇだろーが!!」
自分でもわからないうちに、すごい剣幕でにせまっていた。驚いたのか、は目を見開き身を引いた。寝ていた赤ん坊は瞬時に泣き始め、はそれをあやす。
「・・・ごめん・・・なさい」
赤ん坊が泣き止んだ頃、はぽつりとつぶやいた。ごめんなさい。今にも泣きそうな声で、顔を伏せたままそうつぶやいた。
「嬉しかったの・・・。すごい痛い、辛い思いして生んだこの子がかわいくて仕様が無くて・・・遠くにいるノブナガの子だって思ったら、何だか抑えきれなくて・・・。合わせなきゃって思って・・・つい・・・」
オレはそれ以上を咎めることができなかった。
そもそも、マチたちが言うように。悪いのは十中八九オレだ。結局、子供が出来たって報せを聞いた後も、何の世話もしてやれず、仕事にふけっていた。生まれるってその日だって、立ちあうこともせずにホームで過ごしてた。本当なら責任を取らなきゃいけねぇ立場なのに、全部放り投げて旅団として行動してたオレが全部悪い。それをあろうことか、生まれた子供を連れてきてくれた女にてめぇ勝手に怒鳴って問い詰めるなんて、酷い話だ。
そう反省した。
「悪かった・・・」
「え?」
「オレが悪かったよ・・・」
「・・・そんなことより・・・この子を抱いてあげてよ」
がここに来てからというもの、オレは赤ん坊にろくに目を向けようとしなかった。きっと、自分自身が現実から目をそらそうとしてたんだと思う。
ちっちゃな赤ん坊が、両手をめいいっぱいオレの方へと伸ばし、きゃっきゃと嬉しそうにはしゃいでいる。がその赤ん坊をオレに渡そうと、身を乗り出す。オレは一瞬たじろいだが、観念して、小さいが、しかしたしかに重い命を、自分の腕に抱えた。
小さな瞳が興味深そうにこちらを覗く。少し黙りこくったあとに、赤ん坊はまた、の腕の中にいたときと同じようにはしゃぎ始めた。何故かはわからない。無性に泣きたくなって、声が震える。
「男か?」
「うん。男の子だよ。鼻が、ノブナガにそっくりのね」
そう言って、微笑む。少ししおらしくなったのか?その顔はもう、母親そのものだった。オレは母親の顔なんか知らないが、きっと母親はこんなふうに笑うんだろうな、なんてことをの顔を見て思った。
「目はお前そっくりだな」
「そうかなー?」
この子将来、目ぱっちりバージョンのノブナガになるのかなー?なんて、隣でがはしゃいでいる。
「かわいい・・・な・・・」
「そうでしょ。なんたって、アタシとノブナガの子だからね!」
こんなに、以外の命を大事にしたいと思ったのは、初めてだった。こんなに、以外の人間を愛しいと思ったのも、初めてだった。その命を、はひとりで生んだんだ。その間オレは・・・。
「本当にすまねぇ」
「・・・いいんだ。こうして無事に生まれてきてくれたし、それに何より、私に会ってくれて嬉しかった」
聞けば、がここにいても、オレは逃げてもう二度と会おうとしないもんだと思っていたらしい。そう思えてしまうほどに、腹に子を抱えて森の中の広い家で一人過ごすのは辛いものだったのだろう。それほどに辛い思いをさせてしまっていたと思うと、悔やんでも悔やみきれない。
「ノブナガのこと、困らせるつもりはなかったんだけどな・・・」
は、赤ん坊を抱いたまま一言も喋らなくなったオレを見ながら言う。
「これからも、ノブナガは旅団の人間として仕事してくれてていいんだ。ジャポンに月一で来いなんて言わない。ただ、たまに手紙と写真を送るから、それに返事が欲しい。だから、今日ここで実際にこの子に会ってもらえれば、少しは愛情が芽生えるかなって思って連れてきたんだ」
「バカやろう。月一でも、会いに行くぜ・・・!」
「ノブナガ・・・」
出来もしない約束なんて言わせない。こいつの・・・こいつらの為ならオレは死ねる。
「ね。名前決めてあげて」
「・・・ヒデヨシ」
「・・・決めてたの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・そうだ」
「ノブナガ・・・!大好き!!」
翌日。オレはと共にジャポンへと飛び、ベビー用品を買いあさり、の家に3ヶ月入り浸って我が子・ヒデヨシの成長を見ることに専念したのだった。
その頃の旅団。
(マチ) 「・・・ノブナガまだ帰ってこないの?」
(フィン) 「てめぇのガキが可愛くて仕方ないんだろ」
(パク) 「はぁ・・・結婚・・・出産・・・夢のまた夢だわ・・・」
(マチ) 「パク・・・。何遠い目してんの」