リゾットの母セッピア・ネエロは、己が息子を含む5名の男たちから、・というひどくやつれた――とはいえ端正な顔立ちをしていて、心身共に健康であればさぞ美しかろうという――女と、できれば同じ部屋で過ごしたいとの要望を受けて怪訝な顔をした。そして当然のようにシングルルームの鍵を6つ用意しようとしてカウンターに並べた彼女は、息子の顔色をうかがった。昔から感情をあまり表に出さない子だったが、それはここ十数年の間にひどくなったようだ。何を考えているのか全く分からない。
セッピアは、息子が電話を寄越した時から彼らが訳アリであることは分かっていたし、別に彼らがどういう関係で、どんな背景があってここを訪れたのかなど詮索しようとも思わなかった。あの息子が帰ってきたのだ。これはよっぽどのことだ。息子が帰ってきて、ここを安心できる拠り所として選んでくれたことが何より嬉しい。
だが、それとこれとは話が別であった。6人分のベッドを置いた大部屋の用意なんて無い、という実際的な問題よりも、――分別のついているであろう大の大人とは言え――女ひとりと男共を同じ部屋に泊らせるという倫理的な問題の方が引っかかったのだ。確か、は誰の恋人でも無かったはずだ。
「。……あんたはそれで良いのかい?」
レセプションカウンター付近にあるロビーの一人掛け用ソファーに浅く腰掛け、背を丸めて項垂れていたは、ゆっくりと頭をもたげ生気のない顔で答えた。
「彼らには……つきっきりで護衛していただいてる身なので」
セッピアはがそれ以上何か言うつもりがないらしいことを察すると、ふうと息を吐いて渋々続けた。
「そうかい。……けどね、リゾット。うちには、大の大人6人が一緒に眠れるような大部屋なんかないよ」
「ああ。それは分かっている。……ツインの部屋で構わない。できれば――」
リゾットは幼い頃、オフシーズンに自分の部屋のように使っていたスイートルームを頭に思い浮かべた。このホテルで最も広く、贅沢なつくりをした南向きの部屋だ。広いバルコニーからは地中海の広く美しいコバルトブルーを一望できる。まだ体の小さかった彼に王様のような気分を味わわせてくれた、一番のお気に入りの部屋だった。
「――あの、南向きのスイートがいい」
「わかった。……あとはひとり一部屋ずつあればいいかい?」
「ああ、そうだな。ありがとう、母さん」
こうして、リゾット率いるチーム一行は客室の鍵――スイートルーム一部屋と、その近くのシングルルーム5部屋分の鍵――を手に入れた。
皆はまずリゾットより、各自部屋に荷物を置いてスイートルームに来るよう命じられた。部屋は寝室とリビングの2部屋が連結する構造になっている。仕切りの壁には大きめのアーチが口を開け、入り口から部屋の奥を覗くと寝室の一部――スタンドライトとウォークインクローゼットの扉――が見えた。広々としたリビングには、真ん中に大きなソファーとローテブルが置かれ、向かいの壁に大画面のテレビが壁掛けされている。
ホルマジオはリゾットとに次いで3番目にその部屋へ入った。彼は好奇心に任せ豪華なつくりをした部屋の中を見て回ることにした。
バスルームは寝室の隣にあった。こちらも申し分無い広さだ。一段高いところに深い青色をした窯変タイル張りのバスタブがあり、はめ殺し窓の向こうにはコバルトブルーの美しい海が広がっている。寝室にはキングサイズのベッドが一台。掃き出し窓からバルコニーに出ることができ、バルコニーはリビングとも繋がっている。そしてこちらからも地中海を一望できた。ホルマジオがゆったりとした足取りで美しい風景を眺めながらリビングへと戻った頃には、男たちはリゾットを中心にソファーへ腰掛けるなり壁に寄りかかるなりして集まっていた。はホルマジオと入れ違いでひとり寝室に入り、ベッドの上であおむけになって天井をぼうっと眺めている。
「から目を離しても大丈夫なのか」
プロシュートは壁の向こうにいるであろうの息遣いを探るように身を乗り出し、誰となしに言った。リゾットが答えた。
「今は……落ち着いている。それに大丈夫だ。話はすぐに終わる」
リゾットが言った通り話は5分程度で終わった。リーダーが下した命令はふたつで、そのどちらにも皆異論の余地を見いだせなかったので、一応設けられた質疑応答の時間も10秒とかからない内に終わってしまった。
の命を守れ。そして、自身も休養に努めろ。とにかく暗殺稼業のことは忘れて、このリゾート地でゆっくりと過ごすように。そんな主旨の話だった。もちろん、リゾットはと護衛のふたりだけで外へ自由に出ていいとまでは言わなかった――ホテルの敷地から外へ出る場合は、最低でもふたりを付き添いにするよう、に伝えていた。今までと大して変わらないことだ――が、半島の先端に位置するホテルの敷地内と、ホテルから半島の付け根までに渡る商店街になら出歩いてもいいとのお許しが出た。半島を仕切るのはセッピアであり、店々のほとんどが親戚――ひどく遠い親戚も含まれるが――によって営まれている。怪しい者が来ればすぐに分かるという寸法だ。なのでリゾットは、半島のなかであれば、ある程度は安全に過ごせるだろうと期待していた。
の護衛には日替わりで一人が就くことになった。リゾット、イルーゾォ、ホルマジオ、ペッシ、プロシュートの順で当番を回す。今日はリゾットが当番だと分かるなり、を除く皆が意気揚々と退室した。
「まずホテルの中探検しよーぜ」
「ガキかおまえは」
そんな会話を最後に聞かせ、扉はバタンと音を立てて閉じられた。リゾットはおもむろに立ちあがると、寝室へと足を向けた。扉も無いのにアーチの前でノックをしたい気分に駆られ数秒足を止めた後、またゆっくりと歩き出し、奥へと歩を進めた。
はやはり天井をじっと見つめていた。まるで死人のように、ベッドの真ん中で胸に手を重ねて足を綺麗に揃え、一直線に体を横たえていた。
「話は……終わったみたいね」
良かった。彼女はちゃんと生きていた。リゾットはああと一言答えると彼女に背を向け、ベッドに備え付けられたフットベンチへ腰掛けた。
「思ったより狭いな」
しかしよく考えれば、子供の頃は平均より身長が低かった。今はその約2倍にまで背が伸びたので、部屋が小さく感じるのは当然のことだと腑に落ちた。そして、リゾットは改めてサーキュレーターのように180度首を回して部屋を観察した。感慨深いものだった。まさか、またここへ戻って来ることになるとは。部屋から見える景色は、昔と変わらず美しかった。そして彼を、まるで少年時代に戻ったかのように錯覚させた。
返事を期待していなかったリゾットの背後で衣擦れの音が聞こえた。少しして、が言った。
「……そう? とても素敵なお部屋だと思うけど」
リゾットは驚いて――とは言っても、そんな風な顔は少しも見せず――背後に振り返った。見るとは体を起こしベッドの端に腰掛けて、海の遠くの方をじっと見つめていた。
彼女の前向きな発言と、その穏やかな声音を久しぶりに聞いた気がした。部屋から出られず、死にたがりながら酒を呷ってはバスルームに駆け込み吐いていた彼女が嘘のように。海を映す瞳に、久しく光を点していた。
「……中を案内しようか」
リゾットが提案した。には、この機に外の空気を思う存分吸って欲しかった。はたまた、懐かしくて、少し浮かれているところもあるかも、自分がそうしたいだけかもしれなかった。そして、今の落ち着いて見える彼女になら断られはしないだろうという期待半分。とはいえ、体の方はまだ回復していなくて、だるいからと断られるかもしれないという不安が半分で答えを待った。結果、は期待を裏切らなかった。
「歩いて回っていいの?」
少女のようなあどけなささえも感じさせる表情を向けて言った。出会ってすぐの頃は、よく見ていた気がする顔だ。けれど、欲求のベクトルはその頃と真反対のように見えた。死にたがっていると言うより、生きたがっているように――人生を楽しもうとしているように――リゾットには見えた。
「オレのそばにいるのなら」
は少し頬と耳を赤くした。そしてすぐに、顔を海の方へ戻してしまった。
「やっぱり、監視の目からは開放してもらえないわけね」
そんな言葉で、彼女は顔のほてりをごまかした。
「監視じゃない。護衛だ」
「人が一人以上ついて回るんだから、どっちだろうと同じことよ」
リゾットはたしかに、と思い微かに笑みを浮べ、続けた。
「気分は悪くないか」
「ええ。お酒が抜けたからかしらね。体の調子は悪くない。……おかしいのよ。お腹まで空いてきてる」
「おかしくなんかないさ。まともに食事をとったのは、もうずいぶんと前だろう」
時刻は午前8時。母は朝食の用意をすると言っていた。ホテルの中を探検すると言っていた皆も、きっと料理の匂いにつられてすぐにレストランへ行き着くはずだ。
「朝食ができるまで、少し歩いて回ろう」
リゾットは立ち上がり入口に向かって歩いていき戸口の横に立って扉を開け、が来るのを待った。はすぐに彼のあとについた。足取りも、アジトを出る時と打って変わって軽やかに見えた。
今はどちらのなのだろう。死にたがりの方か、過去に脱走を企てた反逆者の方か。
いや、どちらであろうと関係ない。どちらも自分が愛する女の一面に過ぎないのだ。そして、どちらであっても心配は尽きないのだ。死にたがっても、逃げ出そうとしても、オレはただそれを阻止するだけだ。どちらであろうと関係はない。それは、彼女をむざむざ死なせてしまった後の言い訳か、彼女を自分の手の届かないどことも知れない場所へ行かせてしまった後の言い訳にしかならない。そうなることなど、もう二度と、絶対にあり得てはならないのだ。
ホテルの中庭を囲うように作られた回廊を抜け、ふたりは海辺へ向かった。目の前に広がるのは海と一体化したように見えるインフィニティプール。プールサイドにはパラソルとデッキチェア、その隣にガラストップのサイドテーブルが3組ずつ備えられている。そしてところどころに散りばめられた緑、花々が空間を彩っていた。
はプールサイドを囲う背の低い石柵に腰掛けしばらく海を眺めながら全身で穏やかな風を感じていた。気が済むまでそうすると、また中庭を抜けてホテルのアプローチや、敷地のところどころに散りばめられた小さな庭々を巡って回った。
「すごい」
はちょうど、美しく刈り込まれた生垣に軽く手を触れているところだった。
「どこも、すみずみまで手入れが行き届いているのね。これを、お母さまひとりで?」
「まさか。普段は何人もスタッフがいる。今は皆に休暇を出しているらしい」
「私達のために?」
「ああ。だが、気にすることはない。ピークが過ぎて、スタッフも疲弊しているから調度いいと言っていた」
「それなら良かった。……ほんと、素敵な所ね」
リゾットには、それがの心からの言葉のように思えた。そして、別に自分が経営しているわけでもないこのホテルと、母を誇りに思った。
そう。オレには、血の繋がった家族、故郷という心の礎がある。愛する者が、愛すべき故郷がある。母が悲しむので、死ぬわけにはいかないという強い思いがある。――これ以上、非業の死で愛する者を悲しませるわけにはいかない。これ以上、愛する者の尊厳を踏みにじられるわけにはいかない。それは、自分の魂の死をも意味するからだ。
過去と現在が交錯する場所で、リゾットはそのことを改めて認識した。その間彼は黙ったまま、自由気ままに散策するの後についてまわった。
気づけばリゾットはホテルのレストランにいた。同時に、懐かしいかおりがリゾットの鼻腔をくすぐったことにも気付いた。季節のフルーツ、ブリオッシュ、そしてキウイのクロスタータ。彼はそれらの存在を香りだけですぐに想像でき、まさにその通りのメニューがテーブルいっぱいに並べられていた。だが、それらの朝食はすでに先発した仲間たちに囲われ食い荒らされている最中だった。
「リゾット、あんたの母さん料理うますぎだろ……! あんたの料理のうまさは、母親ゆずりだったんだなぁ」
ホルマジオがクロスタータを頬張り涙ながらに言った。ペッシは一言たりとも喋らずに目を見開き黙々と朝食を頬張り、イルーゾォはペッシと競い飲むように食べ、プロシュートは皿に盛った朝食を食べる合間に上品にカプチーノを飲んでいた。
「朝飯でそれだと身が保たんぞ」
「夕食もやべぇってのか!?」
リゾットは席につきながら黙って頷いた。ホルマジオはマンマ・ミーア! と天を仰いだ。そんな賑やかな食卓を、厨房のカウンター越しにセッピアが微笑みを浮かべながら眺めていた。別に彼女は自分が出した朝食を、客人たちが全て平らげるかどうかと監視している訳ではない。ただ微笑まし気に、そして愛する息子がその賑やかな輪の中にいることを嬉しく思っていただけなのだ。しかし、リゾットは彼女の視線をが少し気にするのではないかと思った。
「。あまり無理して食べな――」
リゾットの心配をよそに、は彼の向かいにつくなり平皿にほぼ全種の朝食を盛り、フォークを握って黙々と食べはじめた。
「ほんとだ。美味しい。……すごく」
はそう言って、にっこりと笑った。皆はその姿に安堵しつつも、人が変わったような彼女の様子に小首をかしげた。
こうして、用意された朝食はあっという間に皿から綺麗さっぱりなくなった。皆が椅子の背もたれに体を預け、食後のエスプレッソを楽しんだ。ひとりミルクを飲み干した――エスプレッソは苦くて苦手だと言ってミルクを飲むと兄貴分に逐一小言を言われるのだが、今回は仲間以外の人目がほぼ無いということでお咎め無しだった――ペッシはいち早く席を立ち、リゾットにどこへ行くかを告げてレストランを抜け出した。
「こんなとこに来てまで釣りかよ」
イルーゾォが言った。
「あれはアイツのライフワークで、且つ精神統一を兼ねた修行みたいなもんだ。運が良ければ美味い魚も食える。何も悪いことはねぇ」
「そうかよ」
イルーゾォはプロシュートの解説に大した興味も示さず一度大きく伸びをすると、彼もまたペッシに続いてレストランを後にした。どこへ行くのかとリゾットに聞かれると、彼は小さく振り向き「ちょっとそこまで」と言って再び歩き出した。
「プール、あったよな」
ホルマジオはレストランから窓の外へ目をやった。目の前に広がるのはやはり一面の青。プールはこの部屋と同じ並びにある。
「ああ。明日一度水を抜くらしい。掃除はもちろんオレ達でやる」
「うむ。あの美味いメシのためならいくらでも働くぜオレは」
「何はともあれ、今は長旅で疲れた体を癒すベストなタイミングってわけだ」
プロシュートは立ちあがると空いた皿を簡単に手元で纏め、自分が使った分と先に出て行った二人分の食器をまとめて厨房のカウンターへと持っていった。すると、流しで片付けをしていたセッピアが慌ててカウンターまで駆け寄り、ありがとうと感謝の言葉を告げてすぐ、残りは置いておいてくれと頼んだ。プロシュートは頷いて、料理の感想と感謝をセッピアに述べると、プールでゆっくりするとリゾットに告げてレストランを後にした。
「私もプールでのんびりしたいわ。リゾット」
がそう言うと、リゾットは静かに頷いた。特にこれと言ってやりたいことを思い付かなかったホルマジオは、流れでその3人についていくことにした。
プールサイドに着くなりは服を脱ぎだした。いつの間にか下着を脱ぎ棄て腰紐を解き、打合せの襟を両側から掴んでマキシ丈のリゾートワンピースを剝ぎ取りはらりとプールサイドに落とした。
先に着いてデッキチェアに体を横たえ、ファッション雑誌を捲っていたプロシュートは、サイドテーブルに雑誌を擲ちサングラスを外して目を皿のようにしてその様子を眺めた。ホルマジオはあまりに突然のことにどのようにリアクションすればいいか分からずフリーズした。ふたりの目に映ったのは――ここ最近の不摂生で幾分痩せたのだろうが、それでも――素晴らしいプロポーション――狭すぎず広すぎない肩、きゅっとくびれた腰、ぷりんと適度に膨らむ尻、そして無駄な肉の無いすらりとした足に細い足首――をしたの後姿(裸)だ。
リゾットはが服を脱ぎ出したと分かるなり、柄にも無く慌てて大判のバスタオルを取りに行ったのだが、彼が戻ってきた頃はすでにブルーのタイルが敷き詰められたプールの水の中を、悠々自適に泳ぎ回っていた。真っ裸でだ。水面での光の反射とか、空気と波打つ水との境で屈折する光のおかげで幾分見えづらいとは言え、とてもこのままにはしておけない。額を抑えながら俯きざまに深いため息をついたリゾットは、が水面から顔を出したタイミングで少し声を張って彼女の名前を呼び、問いかけた。
「水着は」
は顔の正面から後頭部へ向けて両手で水を拭い去ると、あっけらかんと言い放った。
「ない」
それだけだった。素っ裸のまま彼女はまた水中にもぐり泳ぎ続ける。リゾットは今一度大きく溜息をつき、だまってを凝視するプロシュートとホルマジオに向かって言った。
「水着を調達してこい。今、すぐにだ」
プロシュートとホルマジオは顔を見合わせて、え、どっちが行く? という内容の押し問答をはじめようと口を開いたのだが、そうする間も無くリゾットが続けた。
「何をやってる早く行け!」
プロシュートはサングラスを元通りにかけなおして飛び起きると、ホルマジオの襟首をひっつかんで――半ば引きずるようにして――の裸体に背を向けた。
「おまえひとりで十分だろ!?」
「うるせぇ黙ってついて来い!!」
リゾットは水面より下を見ずに済む位置で、そうでありながら視界からが外れないよう後退し、ふたりの帰りをじっと待った。その間、母親が背後から声をかけてきやしないかと気が気ではなかった。
94:Blue
生きるか死ぬか。死ぬか殺すか。私か彼女か。
両極端に二分した思考パターン。けれど、今ははっきりと分かる。どちらの思いも混在していて、意識の境はぼやけていて、ひどくブルー(憂鬱)だということが。
寝転がると、天井には青い空が見えた。目を閉じれば、冷たい水に全身を覆われる感触や浮遊感を覚える。どこまでも続く青の中で、彼女と私は今混ざり合っている。死にたい。けれど本当は生きていたい。生きたい。けれど死んでしまったほうがいい。いつまでたっても出ない答え。ふたつの思いの間で、私という存在が揺れ動いている。
あなたを乗り越えたと言った時、その通りでありたい。けれど、それは真実ではない。結局、私はその時でもまだひどく憂鬱なんだ。私たちは似た者同士だと思っていた。つがいの鳥だと。けれど今では、そんなことを言ってしまったことをひどく後悔してる。
私はあなたに嘘をついた。ごめんなさい。愛する人。頑張っているのだけれど、この先何が起こるかなんて私には分からない。ドアを開けて。心の片隅で、私はまだ遠い異国の地にいるみたい。籠の中の鳥。あなたは私のために存在すると思っていたのに。
私はあなたを責めない。けれど、私はあなたを変えることはできない。でも、だからって自分を憎まないで。あなたを救うことはできないけど。
もう終わったこと。もう終わったこと。もう終わったこと。どうだっていい。私はもう、ここから居なくなりたい。ここに私の居場所はない。あなたに、すべてを委ねるわ。そう言って、私は水の底に沈んでいく。
でも、待って。次はいつ逝きたい(生きたい)と聞ける?