がホルマジオに、おまえはオレのものだと宣言を受けてから三日がたった朝のこと。プロシュートは外玄関の新聞受けから朝刊を取り、コーヒーカップ片手にリビングのソファーでくつろいでいた。
彼は心許せる仲間がそばにいない時は基本的に部屋を見渡せる位置に腰掛ける。そんな彼が気づかないうちに、はプロシュートの向かいに位置するキッチン前のダイニングテーブルについていた。
プロシュートには広げた新聞紙の向こうに、音もなく突然彼女が現れたように見えて驚き息を呑んだ。あまり狼狽えた様子を見せるまいと取り繕う彼をよそに、は睨みを効かせてプロシュートをじっと見つめていた。
「女に見つめられるのには慣れてるが睨まれるなんて初めてだ。何かオレに用でもあんのか」
やっぱりこいつは苦手だ。と、は思った。
確かに、モデルかと言うほどの美しい見た目だし、ギャングというよりむしろ金持ちのマフィアのようにスーツが似合っている。一体どうすればこのチームの給料でそんなリッチな装いができるのか。やはりいい服に身を包んでいると自信がつくものなのか。こうも自信満々な男の前にいると自分がますます小さく思えて嫌になる。女に見つめられるのには慣れてるだと?ならあんたがいままで女に見つめられてきた分だけここから睨み続けてやろうか。
「おい。聞こえてんだろ。何か返事しろ」
それはそうと、この男はまだよく知りもしない私のことを会うなり気に入らんと言いやがった。一ヶ月以上が経った今もまだそう思われているのだろうか。もしそうならかなり癪だ。
「……クソが」
「ああ!?今何つった!?」
癪だが、背に腹は代えられない。
眉間に寄せられるだけの皺を寄せに寄せ、は"クソが"と吐き捨てた。別にこのチームきっての美男にクソと言った訳ではないのだが、プロシュートにはそう聞こえたらしい。
全く、女に睨みつけられながらクソが、なんて言われたのは初めてだ。新人で男ならボッコボコにしてやるところだが、不遜な態度を取るこの女は女なのだ。どんなにイラついても、手だけは絶対に上げてはならない。
プロシュートは新聞紙をテーブルに叩きつけてソファーから立ち上がり、に掴みかかりに行こうとする自分を必死にその場に押し留めた。
「兄貴。お願いがある」
かなり癪だけど。
「お願いを聞いてもらおうとしてる女の顔じゃあねーぞ」
「この顔は元から」
「嘘つけ!」
プロシュートは知っている。この新人が、何故かは分からないがホルマジオの前でだけ茹ですぎたフェットチーネのようにふにゃふにゃとしまりのない顔になるのを。本来、そんな顔はあのガラも目つきも最高に悪い坊主頭のギャングではなく、オレに向けられるべきだ。おい、まだ睨みつけてくんのかいい加減にしろ。
「兄貴、今日時間ある?」
「特段仕事は入ってない」
「じゃーなんでスーツなんか着てんの」
「突然仕事が入ったらすぐに出られるようにだ。朝起きて寝間着のまま下に下りてくるなんて、なってねえぞ」
は一度起伏をおさめた眉間に再度皺を寄せた。そしてスウェットにハーフパンツにスニーカーという自分のラフすぎる格好を見下ろして溜息を吐く。
兄貴にはこれが寝間着に見えるらしい。そりゃ、アルマーニだかラルフ・ローレンだかの高級なスーツに比べればボロ布同然でしょうよ。
そう。問題はそこなのだ。服が無い。
は明日の夜、ホルマジオにディナーに誘われていた。ホルマジオが連れて行くつもりでいる店がどんな所か分からないが――まさか星の付くような高級レストランじゃあるまいが――隣を歩いていて自分が恥ずかしくない程度の格好をしていきたい。
三日前、ホルマジオはありのままでじゅうぶん綺麗だと言ってくれてとても嬉しかったのだが、自分は納得していない。こと自身の身なりについては他の誰が何と言うかではなく、自分が納得するかどうかが問題だ。つまり、今この場でプロシュートに何を言われても、今この場の格好については自分が納得しているので、なってないと言われても何も問題は無いし着替えるつもりなんて毛頭ない。
だが明日の夜、こんな――プロシュートの言葉を借りると――寝間着みたいな格好は絶対にしていけない。今日は夜更しをせず、酒を飲まず、肌を最高のコンディションに持っていって明日の夜を迎えたい。しかしながら、いかに肌をモチモチのピチピチにしていったところで着ている服がそれらしくなければ何の意味もないのだ。
はこれまで居候の連続だったので物はあまり持たない主義だった。家を出る度に着用している物以外の服や靴といった類の物はほとんど捨てた。捨てても何の心残りも無いような数と安値の服しか持っていなかった。当然のことながら、見ているだけで溜息が出てしまいそうな美しいシルエットのハイヒールパンプスなんて持っているわけもない。
こんなにめかし込んで男性と外に出たいと思ったのは、のこれまでの人生で初めてのことだった。だから、どんな格好をしていけば好意を寄せる男性の気を引けるのかもよく分からないし、自分にはそういったセンスが欠落しているという自覚があった。
生憎には気の置けない女友達はもとより、相談に乗って買い物に付き合ってくれる人間がいなかった。それにどんな服を身に纏った女が好みなのか、なんてことはホルマジオに聞いておけば間違いないのは分かっているのだが、サプライズというか、見違えたと彼を驚かせたいという気持ちがあった。そこで彼女はホルマジオ以外のチームの誰かに、トータルコーディネートをしてもらおうと考えたのだ。
リゾット。忙しいだろうし、リーダーをそんなことにつき合わせるわけにはいかない。イルーゾォ。何考えてるかわかんないしデカいし怖い。ペッシ、メローネ、ギアッチョ。女と関りがなさそう。
プロシュート兄貴……。女遊び激しそう。
つまり、の頭の中でプロシュートという男は遊び人だった。セクシー系からキュート系、十代からおそらく五十代くらいまでのありとあらゆる女性と肉体関係を持ったことがあるはず。彼と寝たいと思う女は汲めども尽きぬと言うほどいるだろうが、その中でも厳選された美とセンスの持ち主がこの男に選ばれてきたのだろう。だから彼の性生活――もとい、プライベートの中で磨き上げられた美的センスの力を借りれば、私だってそこそこの格好になれるんじゃないか。
プロシュートが遊び人だという何の根拠も無い決めつけに基づく判断だったが、チーム随一の美的センスの持ち主が誰かと言う点にのみ言及すれば、の目に狂いは無かった。彼はチームの中でも殊更身なりだとか振舞いだとか、他人からどう思われるかという点について強いこだわりがあり、自分がどうという垣根を越えて周囲にいる人間にもその価値観を説く。その口うるささは舎弟であるペッシのお墨付きである。
は一度辺りを見回して耳を澄ませ、誰もリビングに近づこうとはしていないことを確認する。ひと息ついて、彼女はおもむろにプロシュートの側へと歩み寄ると、彼の隣に腰掛けて耳打ちした。
「相談に乗ってほしい」
プロシュートがちら、と横目で確認した限りだと、は顔を真っ赤にして何か言い淀んでいる。珍しくどぎまぎした様子の彼女。この顔は、ホルマジオおまえにしている時と同じ腑抜け顔だ。と、プロシュートは思った。
「なんだ」
「明日の夜、デート……するの。それでデートに着ていけるような服が無くて……どんな服着ればいいかもよくわかんないから、買い物に付き合ってほしい」
「ほう。それでオレを選んだって訳か。案外見る目があるじゃあねーかおめー。で、その相手の好みは分かってんのか」
「……うーん、わかんない。多分、セクシー系が好みなんじゃないかな……」
「おまえセクシーの“セ”の字もねーような格好しかしてねーよな普段」
「う、うるさいな。だから服が欲しいって言ってんの」
それもそうか。プロシュートは納得した。そしてのデートの相手が誰かも察しがついた。一ヵ月の観察の結果、は自分から外に出て活発に活動するタイプでは無い。広い交友関係など全く求めているようには見えないし、デートをする男なんて外で捕まえてくるワケが無い。となると、彼女が今頬を染めて思い浮かべているセクシー系が好きな男なんて限られてくる。ホルマジオだ。ホルマジオが夕食にでも彼女を誘ったのだろう。
「まあいい。予算は」
はつい最近こなした初仕事の報酬をあてにしていた。その中で費やしていいのは――
「五十万リラくらい、かな」
男の家を渡り歩き、小金を稼いでいた頃よりずいぶんと金に余裕がある。には報酬が少ないとギアッチョが騒ぎ立てるのが何故か良く分からなかった。まあ彼は車を持っているから維持費がかかって仕方がないのだろう。とにかく、これからちょくちょく兄貴にお世話になって自分磨きに金を費やすのも悪くは無いかもしれない。もしかするとそんな暇は無いと断られるかもしれないと危惧していたが、兄貴は案外ノリノリな様子だし。
「そんだけありゃ十分だな。いいか。ファッションってのは金じゃあねーんだ。いい服着てりゃいいってもんじゃねー。いくら金を持っててやれグッチだドルチェ&ガッヴァーナだエミリオ・プッチだとバカ高い服を買い揃えようと、着てる本人に素養や自信ってもんが無きゃ一気に陳腐に見えちまう。逆にどんなに安い服を着ていようと、確かなセンスと自信があればいくらでも高見えできちまうもんだ。おまえにはきっとそのあたりのセンスってもんが無いんだろうが、それはオレが補ってやる。だから自信を持て」
「うん。頑張る。ありがとう」
突然ペラペラとご高説を垂れ――もとい、熱弁しだしたところに見るに、やはりファッションのこととなると熱くなるタイプなのだろう。とは言え、なんと心強い女子の味方だろう。まるでシンデレラに出てくる魔法使いだ。
は珍しく笑みを浮かべて素直な態度を見せた。プロシュートは不覚にもその笑顔に見惚れてしまう。
「まあ、なんだ。とは言え、五十万リラじゃあ上から下まで全部買い揃えるのは難しい。……できなくもないが、おまえは服や靴を買った後にもやってもらわなくっちゃならないことがあるから時間も惜しいし、ワンピース一着と靴とバッグ、この三つを揃えよう」
「わかった。ところで、帰って何するの?」
「おまえハイヒールなんて履いたことねーだろ」
「う、うん」
「帰ったら歩行訓練だ」
「ええ~」
あんたはミス・ユニヴァースのトレーナーか何かか。とは心の中でプロシュートにツッコミを入れながらも、心強い味方を得られた幸運に感謝するのだった。
一方のホルマジオは、昨晩から仕事でアジトを離れていた。愛するがプロシュートと共に街に出てデート紛いなことを始めようとしているなんて、知るはずも無かった。
街に繰り出したふたりはショーウィンドウを眺めながら大通りを並んで歩いていた。今歩いているのは、プロシュートがこれまでデートしてきた女性であれば、ショーウィンドウにへばりついて、あのドレス素敵!なんて綺麗なパンプスかしら!このバッグ最高にキレイだわ!と高確率ではしゃぎはじめる大通りだ。そんな彼女たちとは裏腹に、はぴんとこない様子で眉根を寄せて唸るだけだった。
「おまえ、ほんとファッションに疎そうだな」
「……お金が無かったから」
衣食住のうち、食べ物と住処に困ったことはない。だが、稼いだ金は全て居候先の男に吸いあげられていたし、これじゃ足りないと体での奉仕を強要されていた身だ。身なりに気を遣う金銭的、精神的余裕など無かったのだ。そんな過去はホルマジオはもとより、チームの誰にも知られたくはない。
はそれきり口を噤んだ。プロシュートも、がこれ以上の詮索を拒絶していることを悟る。
「もったいねー」
「え?」
「いや、素材はいいのにな。もったいねーと思っただけだ」
プロシュートはふと立ち止まりショーウィンドウに映るの姿を見ながらつぶやいた。は彼がショーウィンドウの向こうでマネキンが着ている服にダメ出しをしているのかと思った。そうではなく、彼が彼女の過去――物心ついてからの十数年――を気の毒に思って口をついて出た言葉だった。
街はこんなに、幸せそうに笑って人生を謳歌する女で溢れているのに、これまでのはそうじゃなかったらしい。それにこれからも、彼女は裏社会でいつ死ぬかもわからない中人を殺して生きていくのだ。プロシュートも今まさにその裏社会に身を置いている訳だが、自身の境遇を差し置いても彼女の将来を憂わずにはいられなかった。
女は幸せそうに笑っているに限る。
「よし。この店にするか」
「え?あ、うん」
いい素材をダメにしているとディスった服を掲げた店に入るのか。と困惑した様子のは、言われるがままにプロシュートの後に続き店の敷居をまたいだ。
「ところで、その首のチョーカーは何だ」
プロシュートはどこに向かえばいいかわからず足を止めて店内を見渡すを追い越して、店の奥へと足を進めた。立ち止まると、彼はハンガーパイプに掛けられた服を掻き分けながらの返答を待った。彼女は酷く狼狽えた様子でプロシュートから目を逸らし、少し間を置いてから質問に答えた。
「もらったの」
「その、明日のデートの相手にか?」
「う、うん。そう」
「じゃあ、それは外せねーわけだな」
まったく。首輪でも付けたつもりか?ホルマジオ。
プロシュートは右の口角を持ち上げてふん、と笑った。そしての首元に手をやって、人差し指でチョーカーを撫でる。はびくりと体を揺らして目を見開いた。ホルマジオ一筋のも、流石にこんな美男に――布一枚隔てているにしても――首を撫ぜられれば頬を赤らめざるを得なかった。ホルマジオが見ていたら確実にひと悶着ありそうな光景だが、幸い彼は今仕事でナポリにはいない。
滑らかな肌触り。ワインレッドのベロア生地だ。ホルマジオにしてはなかなかいいチョイスだ。ベロア生地ってのは秋の装いによくなじむからな。あいつのことだから絶対にそんなこと考えてないだろうが。
「よし。これを着てみろ」
「早っ!」
プロシュートが手に取ったのは黒い総レースのワンピースだ。膝上の丈で、裾の下から3センチメートル程度とデコルテの下地が除かれている。胸下の切り替えから下に向かってふわりと広がるAラインシルエット。女性らしさの塊みたいなそれを見て、は閉口した。私なんかに似合うだろうか……。
「これならさりげなく色気も出せる」
「さむそー」
「寒けりゃこっちのストールでも羽織ってろ。ただ、野暮ったくなるから少しは我慢して、どうしてもという時だけにするんだ。ほら、まだ靴とバッグも買わなくっちゃあいけねーんだ。やることはまだたくさんある。さっさと試着してこい」
「はーい」
はプロシュートから服を受け取ると、口をとがらせて試着室へと向かった。
それにしても、なんて着にくい服だ!後ろにジッパーのある服なんか着た事ない!それに、この肌への密着感。まるで拘束具みたいだ。世の女性はこんな不快な思いをしておしゃれを頑張っているのか!?
は焦り戸惑いながらも何とか着替えを済ませ、おずおずとカーテンをめくりひょっこりと顔だけを外へ出した。手持ち無沙汰な様子のプロシュートが振り返ってを見る。
「見せてみろ」
「はい……」
しぶしぶカーテンを開けたの姿を見て、プロシュートは頷いた。
……思った通り。
彼はゆっくりとに近寄り、彼女の後頭部に手を回した。一つに纏められた髪を下ろして片側に寄せ、反対側の頬周りの髪を耳にかけてやる。
「よく似合ってる」
は言われた途端顔を真っ赤にして再び狼狽えた。
「そ、そうかな……」
「自信を持てと言っただろう。ほら、あとこいつをためしに履いてみろ」
履きやすいようにと踵を向けて床に置かれた赤いハイヒールパンプス。真っ赤ではなく、チョーカーに合わせたワインレッド。スエード生地でアンクルストラップが付いている。8㎝くらいの高いヒールおまえに、は息を呑んだ。
「このピンヒール人殺せそう」
「仕事に流用できていいじゃねーか。ほら、片足出せ」
シンデレラにガラスの靴を履かせる王子様みたいに兄貴をかがませるなんて気が引ける。そう思いながら、はゆっくりと足を伸ばした。ストラップのボタンがパチと音を立てて止められる。片足だけ床に置くことになったのだが、は驚愕した。
何だこの不安定で履きにくい履物は!既に指先が痛い!腰が引ける!こんなので歩けるわけない!これは履物なんかじゃあない!拷問だ!これは拷問器具だ!!
はふらふらと体を揺らし、とうとう堪えきれなくなって試着室の壁に手を付いた。両方の足に拘束具――もとい、パンプスを履かされたは、背中を丸めて立っている。そんな彼女の姿を見て、プロシュートはやれやれといった風に頭を横に振った。
「右足のかかとを左足首の裏に隠すように置いてバランスを取れ。背筋を伸ばして胸を張れ。あとケツと腹に力を入れろ。指の付け根で立つように意識するんだ」
出た。ミス・ユニバースのトレーナー。は言われた通りに猫背を正した。不思議と、ヒールを履いて背筋を伸ばし視線を上に上げていると、どこからともなく自信が湧いてくる気がした。
何とか背筋を伸ばして立つことができたの姿を見て、プロシュートはまたひとつ頷いた。
「ハイヒールに慣れてないならストラップが付いてる方が歩きやすい。ふむ……首元のチョーカーともマッチして統一感が生まれていいな。我ながらなかなかいいチョイスだ」
「おおー。なんかよくわかんないけど、兄貴意外とすごい」
「意外は余計だ。……あとはバッグだな。とりあえず、そのふたつを買ってこい」
ううん。この拷問器具で歩行訓練とか地獄を見る気しかしない……。
はしぶしぶ頷くと、着替えを済ませてレジへ向かった。レジに立つ店員が、プロシュートの姿を見て蕩けたような顔をしている。
そうなるのも分からないでもない気がする。
は店員の視線の先を見やる。顎に手をやって店内のマネキンをしげしげと眺め、ファッション研究に勤しんでいるプロシュート。アジトを出る前までいけすかないヤツという印象しか持っていなかっただが、ここ数時間で彼の株は上がっていた。もうナメた態度を取るのはやめてやろう。
「私、あんなに高い服買ったの初めて」
すっかり寂しくなった財布の中身を覗きながら、は感慨深げに呟いた。
「おまえならどんなに金をつぎ込んだって無駄にはならねーさ」
「……へへ。なんか嬉しいな。あんな格好の私をホルマジオが見たら、どう思うかな」
プロシュートはニヤリと笑った。
やっと尻尾を出しやがったな。
ははっとして口を手で覆った。ゆっくりとプロシュートの顔を見上げると、にやけ面で彼女を見下ろすプロシュートと目が合った。見る見るうちに顔を真っ赤に染め上げたは、その場に足を留めて硬直する。
「心配すんな。おまえがホルマジオに熱上げてることなんか、最初から割れてんだからよ」
「な、なんで……」
「おまえはわかりやすすぎるんだ。ほら、とっとと次の店に行くぞ」
案外カワイイとこあるじゃねーか。
プロシュートは、に対するナメた態度の新人という認識を改めた。彼女は極端にシャイなだけなのだ。極端にホルマジオに入れ込んでいて、極端にアイツおまえにしたときとそれ以外の時の態度が違うだけ。そしてあろうことか、自分の前で、他の男を思って頬を赤くして幸せそうに笑っている。
何か無性に腹が立ってきたな……。つーかなんでホルマジオ?