誰から見ても分かることじゃないか
オレらの間には何かが起こってるって。
本当さ。部屋の端と端にいても感じるよ。
なあ・・・ 訊いてもいいか?
ガッついてるとは思われたくないけど
このまま知らずにいたら
死にたくなっちゃいそうだから・・・・・・。
プライドなんて捨ててしまえ
ベッドに伏したわたしが目を開けると、そこにあるのは白いシーツの海原。きっと、私は乱暴にベッドに滑り込んでしまったんだろう。シーツがひどく波打っている。けれど、自分がそんなことをした覚えなんてなかった。もちろん誰かにベッドに押し倒されたわけでもなんでもない。
そしてこの動悸だ。それは耳の鼓膜にはりつくみたいにどくどくと音を立てて、めまいをも起こさせる。軽く頭痛もするし、一番肝心なのは、秘部のうずき。動悸と同じリズムで、じんじんと疼く。
私は一体どうしてこんなことになってしまっているのかを、思い出すことにした。
着ている服は・・・?いつもの寝る前の姿だ。
私が今いる場所は・・・?私の寝室。
ここまでは、いたって普通なのだ。ならば、何が違う?そうだ。近くにあるテーブルの上に乗っている酒。そして、そのテーブルについている、ひとりの男。
「クロロ・・・?」
「やっとお目覚めかな?」
そう。クロロに食事に誘われて、私は何故か酔って自宅の寝室に・・・。あの、酒が原因だろう。何か、媚薬でも混ぜられたのか・・・?
「どうした。・・・。顔が、赤いぞ?」
「わざとらしいよ・・・クロロ。私に・・・何したの・・・」
熱い吐息。潤む瞳。体の奥底から、うずきを感じる。
「何も。が酒を飲みたいって言うから、オレのとっておきを飲ませてあげただけなんだがな・・・」
君の中に入り込むには何をすればいい。
君の中に入るには?
はいつもそうだった。
オレに気のある素振りを見せて、本心ではオレに何の思いも抱いていない。何度か体をまじわらせた事はあったが、それでも彼女の吐く吐息や喘ぎ声はまがい物・・・。そんな気がして。
少々卑怯だとは思うが、盗賊の頭に卑怯も何も無いだろう。開き直って、媚薬を盛った。酒と併用するとその威力を増大させるという、大変珍しい高価な物を使ったが、彼女を自分のものにするためだ。惜しむことなどしなかった。
潤んだ瞳でオレを憎らしそうに見つめてくる。その正気の薄れた艶かしい表情が、オレの欲情を誘う。
「なあ。どんな気分だ?」
「・・・おかしく、なりそう・・・」
そう。そのまま、足掻いてオレを求めて、果てればいい。いやしかし、もっといやらしいを眺めていたい。
彼女は腕を股に挟んで、じっと身を固くしていた。まるで何かに中から体を這いずり回られているかのような感覚に必死に耐えているのだろう。さて、これからどうしてやろう。
「ふっ・・・うぁっ・・・」
「どうしたんだ。そんなやらしい声を出して」
オレはに近づく。口では決して言わないが、彼女の目が、上気した表情がオレを欲しいと訴えかけていた。少々乱暴に肩を掴んで仰向けにさせると、ピンと張り詰めた両胸のつぼみが、薄いワンピース越しに主張する。
「これは何だ?」
「ひぁっ・・・!」
少し触れただけで、ビクンと体が反応する。ワンピースをたくし上げ、直に撫で、口にふくんで舌でころころと転がしてやると、もういってしまうんじゃないかというくらいに、は喘ぎ始める。するとどうだ、今度はもっともっとと口で催促してくる。これがあの、媚薬の効果か。オレは生唾を飲み込む。
「なら・・・自分で、してるところを見せてくれないか?」
「どうゆう・・・こと・・・?」
もう既にびしょ濡れであろう場所に手を這わせると、はまた壊れてしまうんじゃないかというくらいの声を上げる。
「・・・こんなに濡らして・・・これなら、自分でも大丈夫だよな?」
「やだっ・・・自分で、なんてっ・・・」
「ほら・・・」
オレは奈美の背後に回って右手を取る。それを秘部にあてがわせる。最初こそ微動だにしなかったものの、やはり疼きは続いているんだろう。すぐに彼女の右手が自身の秘部をまさぐり始めた。
「ふっ・・・あっ・・・あっ・・・あんっ・・・」
「今日はとことんやらしいな。・・・」
耳元でそう囁いてやると、は身を震わせて、更に動きを激しくしていった。出し入れされる指がテラテラと光り、いやらしい水音が室内に響く。
「足り・・・ない、よぉっ・・・ふっ・・・あぁっ・・・・・クロ、ロ・・・っ!」
「何が?何が足りない?」
「自分じゃ・・・駄目なの・・・届かないのっ・・・!」
「なら、どうしてほしいか、お願いできるな?」
「クロロ・・・のが、欲しいっ・・・」
それじゃあお願い出来てないだろう。そう諭せば、今のは面白いくらいにオレの言うことを聞く。彼女は今までにないほど素直に、どうして欲しいか言ってのけた。
君がオレを意識している時の君の仕草が好きなんだ。
オレが君の中にいる時の・・・。
しかし、それをが言い終わるや否や、自身をの中へと付き入れていた。余裕が無かった。それほど、が魅惑的で、かわいくて愛おしくて・・・・・・。
「やあっ・・・!!おっきぃっ・・・!!」
「・・・っ・・・」
「もっと、もっと欲しいよ、奥に・・・っあんっ!!」
だいぶたわんだシーツを握って快楽にこらえる。眉をひそめ、目をしっかり瞑って、首を左へ右へと振る。
「・・・っ・・・こちを、見るんだ」
そう言われて見開かれた瞳がオレを射抜く。そして目を合わせたままに。
「・・・気持ちは・・・いいか・・・?」
「うんっ・・・すっごく、気持ち・・・いいっ・・・!」
「感じてるのか・・・?」
「感じ・・・てるよぉっ、クロロのこと、好き・・・好きなのっ」
彼女は今・・・何と言った?・・・オレのことが・・・好き?
「・・・あっ・・・もうダメっ、いっちゃうっ・・・!!」
極限にまで狭くなった肉壁に挟まれて、オレも果ててしまいそうになる。
「早く、イけっ・・・・!」
次の瞬間。の悲鳴に近い声がこだました。持ち上げていた彼女の足は激しく痙攣し始める。それと同時にオレもの中に己の欲を吐き出した。しまった。そう思った矢先のことだ。
「ナカに・・・出ちゃったね・・・」
恍惚とした表情で、自身の秘部からあふれ出た精液を指に絡めて、舐めとったに、オレは心を射抜かれてしまう。
今は駆け引きに乗ってやるよ。
君の動きを待ってる。
でも言っておく。オレは絶対負けない。
「何で媚薬なんて使ったの。あんなもの使わなくたって・・・私・・・」
「君の本心が知りたくて」
「・・・え?」
「媚薬で沸いた頭を使って、あること無いこと適当に喋ってる様で、実はそれは真実なんだよ」
「・・・私何か変なこと言った?」
心配そうな顔でオレの顔をのぞき込む。そんな彼女が愛しくて愛しくて仕方がない。
「オレのこと、好きって」
「そ・・・そんなこと!?」
「は?」
オレの頭は一瞬思考を止めた。
「そんなこと、前から分かりきってることだったんじゃないの!!?」
恋愛においてはよく、惚れた方が負けなんて言われる。惚れたのはどっちが先か、この彼女のコメントじゃ判定はできない。オレは彼女に会ってすぐ彼女を好きになったから。でも、告白した方(=惚れた方)が負けなんだから、なんとか彼女の駆け引きに乗って・・・今から勝つ(つまり、告白される)つもりだった。
けど、彼女は・・・真顔で断定してきたんだ。自分がオレのことを好きだということは、前々からわかってるものとしていたと・・・。だったらもう・・・オレの負けでいい。変なプライドは捨ててしまおう。
「・・・。愛してる」
「私も、愛してるわ」
これはオレが、やっと彼女の中に入り込めたと、確信できた日の話。