The Catcher in the Mirror

After Word



 私がこのお話を書き始めたのは、「ライ麦畑でつかまえて」(The Catcher in the Rye)を読み終えたくらいでした。サリンジャーの超有名な小説の題名をパク――お借りしたのですが、お借りしたのは題名だけでありませんでした~、ということを最後の最後に書かせていただいております。

 読んだことのない方のために、ライ麦畑の方のあらすじを超大雑把に書きます。主人公は17歳のホールデン(男)。大学進学校から成績不良で退学処分を言い渡された彼は、一足早く学校を出て街を放浪します。そこで出会うのは、金や権力が物を言う社会システムに組み込まれて、どんどんけがれ不幸になっていく(ように彼には見える)人々。周りの人たちを、自分はこうなりたくないと突き放す度、ホールデンはどんどん孤独になっていきます。その果てに彼は、どこか田舎の、人のいないところで自給自足の静かな生活をするのだ、と思い至り、妹のフィービーにそう告げます。ですが妹には嫌だと引き留められ、ふたりで遊園地へ行くことに。遊園地で、メリーゴーランドに乗るフィービー(汚れを知らない妹)の美しい姿と、それが永遠には続かないと悟る彼が涙を流してお話は終わります。

 彼は作中で「ライ麦畑のつかまえ役になりたい」といいます。ライ麦畑の中で、純粋無垢な子どもたちが追いかけっこなどをしているのを見守る役です。ライ麦畑のすぐそばにある崖から、子どもたちが落ちないようにと捕まえるために。

 管理人はこの本を読んで最後、捕まえる側でいたかったホールデンが、逆に妹に捕まえられたんだな、と解釈しました。それが彼にとっての救いだったんじゃないかなと思いました。どんなに高尚で汚れのない、自分が素晴らしいと思える生活をしたとしても、彼は人間です。人間にとって孤独でいることほど苦しいことってないし、まだまだ若いホールデンがそれに耐えられるとは、私には思えませんでした。

 で、鏡の中で捕まえる方の話を書き始めたわけです。テーマは、捕まえたようで実は捕まえられたイルーゾォ。夢主ちゃんは最初、イルーゾォを捕まえようとしていましたが、逆にイルーゾォに鏡の中の世界で捕まってしまう。何やかんやで色々あって、夢主ちゃんを(真実の愛を)イルーゾォは捕まえるわけですが、鏡の中で捕まえた夢主ちゃんにまた、彼も捕まっていたんだよ。という流れですね。捕まえるというと何かマイナスのイメージがわきますが、最後のはそうじゃない。それこそ、ホールデンがなりたかった、愛故のつかまえ役です。こうして、懐深すぎ女社長に愛されて、イルーゾォだけでなく暗殺者チームのみんなが救われていく……。といいなぁという管理人の欲にまみれた、救済のお話として仕上げました。

 色々散りばめてきた伏線はしっかり回収しているつもりでいるのですが、あれ? これどうなったの?? というところが何かありましたら、教えて頂けるとありがたいです。一冊の本にしてしまえるくらいの文字の量になってしまって、読み返すのが大変なので(笑)

 一応一区切りついたのですが、夢主ちゃんと暗殺者チームのわちゃわちゃや、イルーゾォとのセッの詳細、そしてシド君とカミッラがどうなったのか、さらにさらにイルーゾォとお義父様(笑)の関係などなど、作中で書ききれなかった書きたいことがまだまだたくさんあるので、サイドストーリーとして上げていくと思います。

 第一話を上げたのが、2021年の3月6日でした。そこから1年9ヶ月と9日かかりましたが、綺麗に終わらせることができました。すべて思い思いに素敵な感想を送ってくださった皆様の応援があってこそです! 本当に、今までありがとうございました!

 いやーしみじみしますね。達成感がすごい。書いてる間めちゃくちゃ楽しかったので、この楽しみが失われると思うととっても寂しいのですが、その寂しさを埋めるべく、また新たな長編の執筆に乗り出せればいいなと思います。

 それではまた、サイドストーリーで! アデュー!

<2022/12/18>




Template by Nina.